B型肝炎訴訟Q&A


Aさん:集団予防接種とB型肝炎問題についてニュースで取り上げられていましたが、これについて教えて下さい。
弁護士:はい。6月28日に,全国B型肝炎訴訟で,国と原告団が合意書に調印しましたね。今回締結された基本合意書は全国の被害患者に適用されますので,長野の患者の救済のために,長野県内の弁護士で弁護団を組みました。


Aさん:なるほど。ではまず,そもそも肝臓とは,というところから教えて頂きたいのですが…。
弁護士:わかりました。まず,肝臓というのは,栄養分を作ったり,貯蔵したり,代謝したり,解毒したり,身体に入ってきたウイルスや細菌からから身体を守ったりという働きをするわけですね。三角定規が逆立ちしたみたいな形をしています。

 

Aさん:なるほど。それで,B型肝炎というのはどういう病気なんでしょう。
弁護士:B型肝炎は,B型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって起こる肝臓の病気です。肝炎になると,肝臓の細胞が壊れて,肝臓の働きが悪くなります。
Aさん:A型肝炎とか,C型肝炎とかいう名前も聞いたことがありますが,どこが違うんでしょう?
弁護士:日本ではB型肝炎とC型肝炎が圧倒的に多いのですが,それぞれウイルスの型が全く違う病気です。病気の状態も異なります。


Aさん:B型肝炎には,どうやって感染するんでしょう?
弁護士:血液とか,血液が混じった体液を通して感染します。また,母子感染と言って,B型肝炎ウイルスに感染したお母さんから産まれた子どもに感染するというケースもあります。まれに,父子感染といってお父さんから子どもに感染するということも発生するようです。
Aさん:一度感染してしまうと,治らないのですか?
弁護士:成人の時に感染したかどうかにもよります。成人になってから感染した場合,まれに急性肝炎を発症する場合もあるのですが,大部分の人は3か月以内にウイルスが身体から排除されて,体内に抗体というものができて,免疫ができます。そのため,本人が気づかないうちに治ってしまいます。これを一過性感染といいます。
Aさん:そうすると,一過性感染ではない場合があるということですね?
弁護士:はい。持続感染といって,ウイルスが排除されずに肝臓の中に棲み着いて増殖し続けてしまう場合があります。こういう人を「B型肝炎ウイルスキャリア」と呼びます。


Aさん:どういう場合にB型肝炎ウイルスキャリアになってしまうことが多いのでしょう?
弁護士:乳幼児期にウイルスに感染した場合は,身体の防御機能がまだ未完成なので,B型肝炎ウイルスキャリアになることがあります。また,ウイルスに感染している母親から産まれた子どももB型肝炎ウイルスキャリアになることがあります。ただ,昭和61年から母子間感染阻止事業というものが始まってからは,ほとんど母子感染は診られなくなったといわれています。
Aさん:B型肝炎ウイルスキャリアになった場合は,どうなるんでしょうか。
弁護士:B型肝炎ウイルスキャリアになった85%から90%くらいの方は,セロコンバージョンといって,成人期までにウイルスが抗体に変化して,肝炎を発症することはほとんどなくなります。「無症候性キャリア」といわれています。
Aさん:この無症候性キャリア以外の方はどうなるのでしょうか。
弁護士:セロコンバージョンが起きないまま成人期に入ると,肝炎を発症することがあります。B型肝炎ウイルスキャリアの10から15%の方は,徐々に慢性肝炎や肝硬変,肝がんなどの症状が現れていきます。
Aさん:B型肝炎の治療はできるのでしょうか。
弁護士:慢性肝炎か,肝硬変か,肝がんまで発展したかによって治療方法は異なりますが,大きく分けて肝庇護療法という,肝炎の進展を抑える方法と,抗ウイルス療法といって,ウイルスとを抑える療法があります。


Aさん:さて,それで,今回のB型肝炎のニュースの話に戻りますが,今回の基本合意とか弁護団とかいうのは,どういう話なんでしょう。
弁護士:はい。かつては,集団予防接種やツベルクリン反応検査などのときに,注射器を使い回していたんです。やがて,このやり方はしなくなったんですが,この注射器の使い回しのために,乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染してしまったというケースがありました。国がその被害の発生や拡大を防止しなかったということで,国の責任を追及する裁判が行われていました。
Aさん:子どもの頃に受けた集団予防接種でB型肝炎ウイルスに感染したということを証明するのは難しい気もしますが…。
弁護士:はい,集団予防接種とB型肝炎ウイルスの因果関係がネックなんです。でも,平成18年に,最高裁判所が,集団予防接種以外にB型肝炎ウイルスに感染する原因が見あたらないなどの理由で,請求を認めたケースがありました。しかし,国がその後も被害者に対する救済措置を講じなかったため,10の裁判所で同じ訴訟が行われていました。その結果,早期かつ全体的な解決のために,今回,国と原告団との間で基本合意書というものを交わすことができました。


Aさん:それが,菅首相が謝罪とともに交わした基本合意書というものなんですね。私も基本合意書を見させて頂いていますが,かなり大部にわたるものですね。まず,救済の対象となる方々はどういう方々ですか?
弁護士:まず,B型肝炎ウイルスに持続感染しるという検査結果があって,集団予防接種を受けたことがあることが前提です。そして,生年月日が昭和16年7月2日以降で昭和63年1月27日までの方であること,産まれたときに母親がB型肝炎ウイルスに持続感染していないこと,ほかに感染原因がないことなどの要件をクリアする方は,裁判を起こせば,国から一定のお金が払われることになりました。
Aさん:一定のお金というと,具体的にはどの程度なんでしょうか。
弁護士:死亡,肝がん,重度の肝硬変になった方には3600万円,軽度の肝硬変の方は2500万円,慢性肝炎の方は1250万円,慢性肝炎が発症してから20年経過してしまっている方で,まだ治療を受けている方は300万円,慢性肝炎が発症してから20年経ってしまい,治療も受けていない方は150万円,無症候性キャリアの方は600万円,感染してから20年経った無症候性キャリアの方は50万円がそれぞれ払われます。


Aさん:いろいろ複雑に決まっているんですね。これは,どこかの行政の窓口に請求すればもらえるものなんでしょうか。
弁護士:いえ,これは,一度資料を揃えて裁判所に提訴しなければなりません。その上で,裁判で和解するという枠組みになっています。
Aさん:あっ,そうなんですか?裁判を起こさなければならないということですね。この裁判で一度和解した後に,病気が進展して,たとえば無症候性キャリアの人が肝炎になったというときは,改めて請求できるのですか。
弁護士:はい。改めて裁判を起こす必要はありますが,以前に受け取った額と,今回の区分に基づく額の差額を受け取ることができます。
Aさん:逆に,過去に慢性肝炎になったけど,今は薬のおかげで治ったという方でも大丈夫ですか?
弁護士:はい。大丈夫です。


Aさん:残念ながら患者さんご本人が亡くなっている場合はどうするのでしょう。
弁護士:ご遺族が原告となります。
Aさん:今回の基本合意に基づく請求のために,提訴の期限はあるんですか?
弁護士:期限はありません。ただ,カルテなどの資料はなるべく早めに揃えておいた方がよいですし,ご親族による陳述書が必要な場合もあります。今認定を受けておかないと,将来,必要な資料が揃わないこともありますから,早い方がいいと思います。長野ではB型肝炎訴訟長野弁護団を結成し,相談を受け付けています。電話番号は026-234-7754です。

B型肝炎訴訟 長野弁護団

かつて,集団予防接種やツベルクリン反応検査などのときに,注射器を使い回していました。この使い回しのために,乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染 して しまったというケースがあり,国がその被害の発生や拡大を防止しなかったということで,国の責任を追及する裁判が行われてきました。

 

この裁判の結果、平成23年6月28日に,全国B型肝炎訴訟で,国と原告団が合意書に調印しました。今回締結された基本合意書は全国の被害患者に適用されることになっています。

遠い昔に受けた集団予防接種でB型肝炎ウイルスに感染したということを証明するのはほとんど不可能です。ただ,平成18年に,最高裁判所が,集団予防接種 以外にB型肝炎ウイルスに感染する原因が見あたらないなどの理由で,請求を認めたケースがありました。今回,早期かつ全体的な解決のために,国と原告団と の間で基本合意書を交わすことができました。

救済の対象となるためには,幾つかの要件を充たしていることが必要です。

ま ず,①B型肝炎ウイルスに持続感染しているという検査結果があること,②集団予防接種を受けたことがあることが前提です。また,③生年月日が昭和16年7 月2日以降で昭和63年1月27日までの方であること④産まれたときに母親がB型肝炎ウイルスに持続感染していないこと,⑤ほかに感染原因がないことなど のいくつかの要件があります。

これらの要件を充たす方は,裁判を起こして立証が認められれば,国から一定のお金が支払われることになりました。

裁判・和解手続の概略については、厚労省のHPのページをご参照下さい。


長野では、東京弁護団の協力を得て、B型肝炎訴訟長野弁護団を結成し,長野県内の方々を対象に相談を受け付け、訴訟を提起しています。